ホテル業界がやめとけと言われる理由10選。対処法について元ホテルマンが解説。
ホテル業界での仕事は華やかに見える一方で、一度経験するとやめとけという人も少なくないです。
私は元ホテルマンとして、この業界での経験を積んできました。
今回は、多くの人がホテル業界をやめとけと言うその理由を、実体験にも基づいて詳しく解説します。
この記事を通して、ホテル業界の光と影、そしてその中で働くことの真実を皆さんにお伝えしたいと思います。
ホテル業界がやめとけと言われる理由10選
ホテル業界がやめとけと言われる理由は次のようなものがあります。
- 慢性的な長時間労働
- 休日日数が少なく、平均と比べ2週間以上も休みが少ない
- 低賃金で給与が業界平均以下である傾向
- 万年人手不足の業界だから
- 目の前の仕事に追われ、キャリアアップが難しい
- 立ち仕事で移動距離も多く肉体的負担が大きい
- 不規則なシフトや生活で肉体的、精神的にきつい
- お客様から受ける精神的なストレス
- 閉鎖的な人間関係がきつい
- 予算・売上ノルマ責任が店舗に押し付けられる
私も働いてきた中で感じてきたことや、同僚が苦しんでいる姿を多く見てきました。
そんな内容を、ホテル業界を目指す人やホテル業界で仕事を続けていくか不安を抱えている方に向け解説をしていきます。
①慢性的な長時間労働
ホテル業界における慢性的な長時間労働の理由はいくつかありますが、まず最初に挙げられるのは、ホテルの営業時間の関係です。
ホテルは24時間営業していることが多く、宿泊客や来訪者に対応するために、スタッフが常に配置されている必要があります。
そのため、従業員のシフトを組む際には、朝から夜までの長時間勤務が必要となります。
2022年dodaが15,000人に行った調査では、平均残業時間が上記のようになっています。
ホテル業界が含まれる「旅行/宿泊/ホテル/冠婚葬祭関連職」については、下記のような残業時間数です。
職種名 | 残業時間/月 |
---|---|
旅行/宿泊/ホテル/冠婚葬祭関連職 | 17.7 |
数字だけを見るとそこまで多くないように感じられますが、ホテル業界では、午前中のチェックアウト、午後のチェックインの間の時間に長時間休憩する「中抜け勤務」と呼ばれるものがあります。
また、下記は私が実際に勤務していたホテルのシフトの一部です。
勤務時間を見てわかる通り、最初と最後の日が午前6:00~午後21:00までの勤務となっており、忙しい日には追加で残業があります。
この日は、最低でも15時間の拘束時間があり、12時間の勤務で3時間の休憩というシフトでした。
このように見た目の数字には見えずとも、1日1日の勤務時間が長いケースや拘束時間が長いのがホテル業界の特徴としてあげられます
勤務の時間は長くなくとも拘束時間が長いため、心が休まらないシーンも多くありました。
②休日日数が少なく、平均と比べ2週間以上も休みが少ない
ホテル業界で働く場合、休日の日数が少ないことは珍しくありません。
ホテルは24時間営業であり、休日も多くの人々が宿泊やイベントを楽しむために利用します。そのため、スタッフの配置が必要であり、休日出勤が求められることがあります。
厚生労働省の平成30年就労条件総合調査では、「宿泊業,飲食サービス業」が年間97.1日と最低日数となっており、休日日数の少なさが他の業界と比べても少ないことがわかっています。
業界 | 1企業平均年間休日総数 |
---|---|
業界平均値 | 107.9日 |
宿泊業,飲食サービス業 | 97.1日 |
また、同じく令和5年就労条件総合調査では、年次有給休暇日数と取得割合では「宿泊業,飲食サービス業」が 最も低くなっています。
業界 | 平均取得日数 | 平均取得割合 |
---|---|---|
業界平均値 | 10.9日 | 58.3% |
宿泊業,飲食サービス業 | 6.7日 | 49.1% |
同じ時期に行われた調査ではないので、単純な比較は難しいですが、平均よりも14日も休日が少ない業種となっており、最低となっていることが分かります。
ここにシフト制という適正人数を元に行われる仕事のため、病欠や急遽変わりが必要となった場合には、休日出勤も必要なシーンが出てくるでしょう。
③低賃金で給与が業界平均以下である傾向
ホテル業界では、低賃金で給与が業界平均以下である傾向があります。
令和4年に行われた厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査では次のような結果が出ています。
業界 | 賃金 |
---|---|
産業別平均 | 327.1 |
宿泊業,飲食サービス業 | 257.4 |
長時間の労働や休日日数を強いられるにも関わらず、平均の賃金も最低値となっています。
平均で257万円ですので、もっと少ない方もいることが考えられ、月に20万円前後の収入が平均ラインとなっているとても厳しい業界です。
④万年人手不足の業界だから
ホテル業界は長年、人手不足という問題に直面してきました。
労働時間の長さや休日の少なさ、低い給与水準といった要因が離職率の高さにつながっているでしょう。
業界 | 離職率 |
---|---|
宿泊業,飲食サービス業 | 25.6% |
実際に厚生労働省の調査でも「宿泊業、飲食サービス業」はすべての業界の中で一番離職率の高い業界となっています。
⑤目の前の仕事に追われ、キャリアアップが難しい
多くのホテル業界の従業員が抱えている課題の4つ目は、目の前の仕事に追われることによるキャリアアップの難しさです。
自分自身のキャリアや年収を向上させるためには、自己のスキルを向上させる必要があります。
ただし、残業時間が長く、休日の数が少ないため、休みの日に勉強することも難しいでしょう。
ホテルで長く働いていると、気づけば何もできない人になってしまうケースがあるため、定期的に自分のキャリアを見直し自分自身の立ち位置を再確認する時間を作ると良いでしょう。
⑥立ち仕事で移動距離も多く肉体的負担が大きい
ホテルのフロントスタッフは、チェックインやチェックアウトの手続きを担当します。お客様の要望にお応えするため、笑顔で丁寧に対応する必要があります。
同時に、立ち仕事であるため、長時間同じ姿勢で立ち続けることが求められます。
そのため、足や腰への負担が大きくなることがあります。
ホテルのハウスキーピングスタッフも同様に立ち仕事であり、移動距離も多いです。
部屋の掃除やベッドメイクなど、ゲストが快適に過ごせるように清潔な環境を提供する役割を果たしています。
一日に何十部屋も回ることもあり、そのために足腰への負担も大きくなることがあります。
⑦不規則なシフトや生活で肉体的、精神的にきつい
不規則なシフトや生活で肉体的、精神的にきついという理由で、やめる人も少なくありません。
ホテル業界では24時間営業が求められるため、夜勤や早朝勤務をすることがあります。
また、「シフトワーク」は体を壊す職場条件トップ10の2位にランクインしており、ホテル業界での仕事は肉体的、精神的にも負担の大きい仕事と言えるでしょう。
- 保険がない
- シフトワーク
- 長時間労働
- 業績が不安定
- 仕事のせいで家庭に不和が起きる
- 仕事に関する権限が少ない
- 仕事の責任が重すぎる
- 逆に仕事がない
- 社会的なサポートが少ない
- 組織内の不公平
これらの条件を満たすほど、早死に、精神病の発症率、通院の確率が向上する結果となっています。
⑧お客様から受ける精神的なストレス
ホテル業界で働く人々が直面する様々な困難やストレスは数多くありますが、その中でも特に厳しいのがお客様から受ける精神的なストレスです。
お客様の要望やクレームに対応することは、時に非常に苦しいことがあります。
ホテル業界では、お客様の期待を満たすことが最重要とされています。
しかし、お客様は一人ひとり個性や好みが異なるため、全ての要望に対応することは容易ではありません。
そのため、お客様からのクレームを受けることで、退職をしてしまうことになる人も少なくない現状です。
⑨閉鎖的な人間関係がきつい
ホテル業界は魅力的な職業の一つですが、中には閉鎖的な人間関係があるという声もあります。
ホテル業界では、地方への就職をするケースも多く、職場以外での友人がいないことが理由の一つです。
ホテル業界はシフト制の勤務が一般的であり、同じ時間帯に休みが合わないこともあります。そのため、職場での人間関係を築く機会が限られると言われています。
また、勤務時間や休日が異なることから同じ部署やチームの人が全員揃う場面が少なく、深い人間関係やチームワークを築きにくいケースもあります。
私は温泉地で働いていましたが、観光地であったため、近くに居住している人は少なくホテル以外の人間関係も閉鎖的でした。
⑩予算・売上ノルマ責任が店舗に押し付けられる
ホテル業界は、予算や売上ノルマの責任が店舗に押し付けられることがあります。
ホテルの売上は、現場での接客やサービスなどの質も重要ですが、立地、コンセプト、そしてマーケティング戦略に大きく影響を受けるビジネスです。
店舗には、所定の予算を達成するという責任が課せられますが、その予算は現実的でないものであったり、そもそも経営層の判断ミスのケースもあります。
ホテルマンなら、売上げ達成のため、経費削減のためになくなく、お客様に良いサービスを届けることができないと感じたシーンがあるのではないでしょうか。
ホテル業界をやめたいと思った時の対処法
ホテル業界で働いていると、時折モチベーションが下がることがあります。
特に、長時間労働や厳しい労働環境によって、自分自身の成長やキャリアの可能性に疑問を感じることもあるでしょう。
ここでは「ホテル業界をやめたいと思った時の対処法」を紹介していきます。
- 出世をして自分で管理をできる範囲を増やす
- 会社内での働く場所を変えてみる
- ホテル業界の正社員を辞めて転職をする
対処法①出世をして自分で管理をできる範囲を増やす
自分の求める賃金や適切な労働時間など、健康的な理想な働き方を実現するためには、自分の意見をしっかりと主張できるようになることが必要です。
そのためには、出世をしていく必要があるでしょう。
大きな企業のホテルではそう簡単には出世をしていくのは難しいかもしれませんが、中小のホテルであれば数年間、出世を目指すことで変わっていく部分があるでしょう。
実際にマネージャークラスになれば、シフトの働き方調整や有給の取得率の向上など様々な提案を行なっていくことができるようになるでしょう。
対処法②社内での働く場所を変えてみる
会社内の異なる部署やチームで働くことは、新しい環境を体験することで、考え方やモチベーションが変化することがあります。
例えば、フロントデスクで働いていた方が、マーケティングチームなど別の部署に移ることで新たなスキルや知識を身につけることができます。
他にも、会社内での別の施設や支店への異動を希望することも考えてみましょう。
新しい場所での働き方やお客様との関わり方によって、仕事の捉え方が変わるかもしれません。また、異動によって地理的な移動が伴う場合は、新たな土地での生活や文化の違いを楽しむことができるかもしれません。
部署や施設の異動を実現するためには、自身の能力を向上させることも求められます。
他部署でのプロジェクトや研修に積極的に参加し、新たなスキルや知識を身につけることや、上司や同僚からの評価を得るために、真剣に業務に取り組む姿勢を示すことが大切です。
ただし、異動が難しい場合や希望する場所が見つからない場合もあるかもしれません。
その場合は、外部での転職活動や新たなスキルを身につけるための学習機会を探すなど、他の選択肢も考えることが大切です。
対処法③ホテル業界の正社員を辞めて転職をする
ホテル業界をやめたいと思ったら転職をしてしまうのも一つの手です。
ホテル業界での経験やスキルは、他の業界や職種でも活かすことができます。
例えば、ホスピタリティに携わった経験は、サービス業全般において高く評価されることがあります。
他にも英語の担当なスタッフもいたりと、他の業界でも活躍ができるケースもあるので、しっかりと見極めどのような業界が良いか考えてみましょう。
私自身もホテル業界からIT業界に転職する際は、活かせるスキルがなく苦労をしましたが、思い切って他の業界に転職をすることも可能なので、考えてみると良いでしょう。
ホテル業界を辞めるのにおすすめの転職エージェント・転職サイト
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まとめ
ホテル業界がやめとけと言われる理由10選をご紹介いたしました。
ホテル業界がやめとけと言われる理由は、業界の競争の激化や労働条件の厳しさなど、様々な要素によって引き起こされるものです。
今後もホテル業界で働き続けたい方は、自分自身で変えられることを変えていくことや、変えることのできない部分については転職などを通じて人生を転換してみましょう。
また、転職を考えている方には、おすすめの転職エージェント転職サイトもご紹介しましたので、ぜひ参考にしていただければと思います。